My Style Advisor

78歳の素敵な友人に頼まれて、昨日は一日中「彼女のSTYLE ADVISER」を務めた。世界中の最高の物をご存知でいらっしゃる現役ビジネスウーマンの彼女は、運転手さん付きの車で毎日楽しく働いていらっしゃる。ご高齢ということもあって、今までのご自分の生活範囲から抜ききれないとのことで、是非新しい挑戦をしてみたいとおっしゃった。

朝8時に帝国ホテルの「ル・セゾン」で朝食、そのメニューは温野菜とエッグ・ベネディクト、こんがり焼けたライブレット、ジュースはイタリアの真っ赤なブラッド・オレンジジュース。蜂蜜入りのお紅茶で心豊かな1日のスタートです。ナイフやフォークの使い方にもエレガントさがにじみ出て、品を醸し出している。ご高齢でも姿勢はきちんとしていらして、昼間に相応しい紺色のバレンティノのスーツをお召しになっている。白蝶貝のお花のボタンが花びらのような袖口にぴったり。この日のジュエリーはヴァン・ クリーフの四つ葉のクローバーのブローチと、同じデザインの指輪。首元には白のオーガンジーのスカーフが施され、春の風を感じさせている。

私とは年がかなり離れているが、一番の親友であり、なんでも相談できる素敵な女性である。その彼女から学ぶことは沢山あるが、今日は年の離れた私から、新しく少し若いエッセンスを差し上げることになる。

まず日比谷にある「シャンテ・シネ」で上映している「クイーン」にお連れした。混雑しているところにお身体の心配もあって映画を見に行くことも控えていらしたようだったが、思いきってお誘いしてみた。それというのも、彼女のライフスタイル、性格や嗜好、行動、雰囲気と、映画『クイーン』に出てくるエリザベス女王とがとても近い気がしてならなかったからだ。ホテルより歩いて5分とかからないが、車で移動したいと仰ったのには驚いた。そのような振る舞いまでもがクイーンそのものなのだ。

まず切符の買い方について説明する。60歳以上はシニアといって1,000円しかかからない。通常は1,800円のところ、割引されるとお話しすると、目を輝かせて楽しそうに笑われた。切符を買う時も一緒にどのように買うのか見たいとぴったり私についてご覧になる。好奇心旺盛である。そこで売店で飲み物を買う方法も教え、紙コップにはプラスチックの蓋がついていて、その蓋をわざわざ開けなくとも、小さく開いている穴から飲めることも彼女にとっては新しい発見だ。私も含めて普通の人は「そんなこと?」と不思議に思えるかもしれないが、この友人世代の方には初めての経験なようだ。混雑を避けて早朝一番の時間を選んだ理由は空いていることである。(それにしても、こちらもその時間は本当に空いているかどうか予めリサーチしないととんだ恥をかく。)一番よい席を二人で確保でき、二人ともとても満足。

予告編が始まると音の迫力に喜ばれ、「テレビとは違うわね~」と大喜び。席の取り方も何列目が一番見やすいかも、後ろをみたり左右比較したりと研究された様子。ただただ時間を過ごすのではなく一つひとつ確かめていらっしゃる様子は、まるでエリザベス女王と映画を見ているような錯角さえ覚えた。それからその日一日は彼女のことを“クイーン”と呼び続けてからかった。

ところで、彼女の宝石コレクションは日本一といっても良いと思う。映画で使われている宝石や洋服の着方、それらがどのようなT.P.O.で実際に使用されているのかとても気になられたようだった。エルメスのスカーフの結び方、色合いやT.P.O.を考えた洋服の着方、すべて映画から学べる。その筋の人たちが衣裳を研究して実際に使われているように考えているからだ。それにしてもエリザベス女王が一人でオンボロ・ジープを護衛なしで運転する姿は爽快であった。きっと彼女はこのシーンを見て、運転手付きの普段の自分と比較したことだろう。案の定、映画が終ったら駐車しているところまで“歩いて行きましょう。”と仰った。映画の終了後とても勉強になったと仰って、見た目にもとてもお元気になられたようだった。

一月に一回は綺麗で楽しくためになる映画を見たいとのことだが、DVDの見方や買い方などもコーチした。私の河口湖でのライフスタイルなどのお話しも興味深いらしく「夜は読書か好きな映画を何本も借りてみるのよ」とお話ししたことが刺激になり、これから映画のアドバイサーにもならなくてはならないことになった。またどんなDVDプレーヤーを買ったらよいか、そのアドバイスもして欲しいとのことだった。これは得意な息子の知恵を借りることにする。

映画が終って新しい眼鏡をご覧になりたいとのことで、近くのアラン・ミクリに行ってみた。ここは彼女のパーソナリティーとは違った、少し今風のクリエイティブなものが多かったが、いつもと違う眼鏡もOFFのセーター姿にはぴったりだ。若返りと新しい自分発見にも役に立つ。そのお隣のラ・メゾン・デュ・ショコラは前に私からプレゼントしたこともありご存知でいらしたが、その後何回かいらしてすべての種類をお買いになり研究つくされたようだった。彼女の好奇心と財力は若い人には叶わないものがある。

丁度よくお腹がすいてきたので、丸の内のフォーシーズンスホテルのレストランEKKIで昼食にすることにした。最近はインテリアの内装も良くなり、この日のサービスも完璧で、上得意ではないのに名前を覚えていてくれて、すべて名前をつけてサービをしてくれた。「菅原様、ご準備が出来ましたのでお席にご案内いたします。」「菅原様、今日のお奨めのメニューは仔羊でございます。」あらゆるところに「菅原様」をつけるのだ。これが嬉しい人と嫌な人がいるが、今回彼女をこのお店にお連れした理由の一つに「A様○○○・・・。」と彼女に対してもすぐに常連扱いをし、心地よいサービスが受けられるからだ。いつもご自分のゲストを招かれる時に配慮なさることは、お店の常連になるまで通い続けること。そのほうが間違いなく正しいサービスを頂け、それが顧客満足度につながるからだ。その点でもよいのではないかとご説明すると非常にご満足の様子で、必ず近いうちにお友達をお連れになると仰った。新しいレストランにお連れすると必ず再度いらっしゃるのには感心する。

この日のサヨリの前菜とトマトのシャンパン味のムースはさっぱりしていて春を感じさせ、仔羊は外国人客用に出来ているので少し量が多かったが、味は久しぶりのヒットでハーブ味のソースがとても美味しく感じられた。デザートも最高。最後はミントのハーブティで「美味しい、美味しい」と大喜びされた。

今度は丸の内のザ・コンランショップ。ここも初めていらしたが、子どものように喜ばれ、早速いくつかお買い上げ。カラフルな籠や真っ白の棚もお気に入り、近いうちにまたいらっしゃるとのことだ。生まれたばかりの曾孫さんのために、赤ちゃんのおもちゃの選び方、軽井沢の別荘ライフで使える食器やガーデニング小物の使い方、すべて喜んでいただけた。葉だけでアレンジしたガラス花器の使い方にも感心なさり、今回の彼女へのアドバイスは大成功だった。それに私のコンラン・カードを利用することにより、さらに5%引きになり、その方法も教えた。次回はまた新たなる挑戦をしていただくため考案中である。

私達の仕事は、このように服装、メイクアップやインテリアデザイン、映画、ジュエリー、本、食品など、生活にかかわるあらゆる商品についてその方に適切なアドバイスをすることだ。大事なことは、その方一人ひとりのライフスタイルに合ったものを選ぶこと。他のADVISERと違うことは、自分自身で実際に体験し、実際に何回も行動し、マナー、サービス、暮らし方、旅、生活の知恵までのソフト面のアドバイスができることである。

今朝、彼女からあのラ・メゾン・デュ・ショコラのプレゼントと御礼の電話を頂いた。昨日は友人としてお会いし、仕事ではなかったのだが、彼女の心の行き届いた御礼も通り一遍のものではなく、私の大好きなチョコレートを暖かい心からのメッセージと共に頂いた。ただ品物を買うのではなく、一人ひとりの生活や向上に合うものをアドバイスする喜びは、言葉では表現できないものがある。

ライフスタイルを豊かにするアドバイスを致しております。
ご興味のある方はコンタクトよりお問い合わせ下さい。

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Written by Akemi Sugawara